子育て世帯にとって、ベビーシッターは非常に心強い存在です。共働き家庭の強い味方になるだけでなく、リフレッシュや急な用事の際にも頼りになります。しかし、その利用料金は決して安くなく、家計への負担が気になるところです。そこで活用したいのが、国や自治体、企業などが提供する様々な割引・助成制度。これらの制度を上手に組み合わせることで、利用料金を大幅に抑えることが可能です。
「ベビーシッターの割引券って、複数枚同時に使えるの?」
「国の助成と自治体の助成って併用できるの?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。結論から言うと、多くのケースで複数の割引・助成制度を併用することが可能です。しかし、中には併用ができない組み合わせや、併用する際に注意が必要なルールも存在します。この記事では、ベビーシッター割引・助成制度の主な種類と、それらの併用について詳しく解説していきます。賢く制度を活用して、ベビーシッターをもっと気軽に利用できる家計に優しい子育てを目指しましょう。
ベビーシッター割引・助成制度の主な種類
まずは、ベビーシッターの利用に際して活用できる、代表的な割引・助成制度の種類を解説します。
①こども家庭庁ベビーシッター券(旧:内閣府ベビーシッター割引券)
最も広く知られているのが、こども家庭庁ベビーシッター券です。これは、こども家庭庁が、企業の従業員の子育て支援としてベビーシッターサービス利用料金を補助する制度です。企業が従業員向けにベビーシッター割引券を導入することで、従業員はベビーシッター料金の一部補助を受けられます。
- 特徴: 企業が従業員向けに導入する制度であり、従業員が利用できる。1枚2,200円の割引券として発行され、1日あたりの利用枚数や1ヶ月あたりの利用枚数に上限がある。
- 対象者: 割引券を導入している企業の従業員。
- 利用できるサービス: こども家庭庁ベビーシッター券を取り扱っているベビーシッターサービス会社。
こども家庭庁ベビーシッター券について、詳しくはこちら→こども家庭庁ベビーシッター券とは?
②地方自治体独自の支援制度
各地方自治体も、子育て世帯を支援するために独自のベビーシッター助成制度を設けていることがあります。その内容は自治体によって多岐にわたりますが、主に以下のようなタイプがあります。
- ベビーシッター利用支援事業: 待機児童対策や一時預かりの利用促進などを目的として、ベビーシッター利用料金の一部を助成するもの。利用目的や時間帯に制限がある場合が多いです。例: 東京都の「ベビーシッター利用支援事業(一時預かり利用支援)」「ベビーシッター利用支援事業(待機児童対策)」など。
- 多胎児家庭支援: 多胎児(双子、三つ子など)を育てる家庭の負担軽減を目的とした助成。
- 病児・病後児保育支援: 子どもが病気や病気回復期で保育園などに預けられない場合に、ベビーシッターを利用する際の助成。
- リフレッシュ支援: 親のリフレッシュを目的とした利用に限定される助成。
各地方自治体独自の割引制度の特徴は以下の通りです。自分の住んでいる自治体に割引制度があるか、またそれは自分が対象となるかどうか、まずは確認してみましょう。
- 特徴: 自治体ごとに制度内容、助成額、利用条件、対象者などが大きく異なる。
- 対象者: 各自治体に在住している子育て世帯。所得制限がある場合も。
- 利用できるサービス: 自治体が指定するベビーシッターサービスや、一定の基準を満たしたベビーシッター。
③企業の福利厚生サービスによる補助
多くの企業が、従業員の福利厚生の一環として様々な外部サービスと提携しています。ベビーシッターサービスもその一つで、代表的なものには以下のようなサービスがあります。
- ベネフィット・ワン(すくすくえいど)
- リロクラブ(福利厚生倶楽部)
- イーウェル(WELBOX)
- リソルライフサポート(ライフサポート倶楽部)
これらの福利厚生サービスを通じて、ベビーシッター利用料金の割引や補助を受けることができます。
- 特徴: 企業が提携している福利厚生サービスの内容による。補助額や利用回数に上限がある場合が多い。ポイント付与や割引券の発行など形態も様々。
- 対象者: 各福利厚生サービスを導入している企業の従業員。
- 利用できるサービス: 福利厚生サービスが提携しているベビーシッターサービス会社。
④ベビーシッター会社独自の割引・キャンペーン
ベビーシッターサービスを提供している会社自身も、新規会員向けの割引や、特定の利用期間・時間帯のキャンペーン、月額会員向けの優待などを提供していることがあります。
- 特徴: 各サービス会社独自の制度。期間限定のものが多い。
- 対象者: 各サービス会社の会員、または新規利用者。
- 利用できるサービス: その割引・キャンペーンを提供しているベビーシッターサービス。
自分が使える割引制度の調べ方について、詳しくはこちら→ベビーシッターの割引券ってどんな種類がある?自分が使える制度の確認方法とは
ベビーシッター割引・助成制度の「併用」は可能なのか
割引券の「併用」についてですが、結論から言うと、一般的に「こども家庭庁ベビーシッター券」と「企業の福利厚生補助券」の併用は可能です。また、ご夫婦それぞれが勤務先から得られる割引券を併用できるケースも多くあります。
しかし、地方自治体の制度や、異なる種類の助成金との併用には注意が必要です。
併用が可能なケース①:こども家庭庁ベビーシッター券 + 企業の福利厚生補助券
これは、最も一般的な併用パターンであり、多くの方が利用している方法です。
併用のイメージ:
- まず、ベビーシッターの利用料金からこども家庭庁ベビーシッター券の割引額が差し引かれます。
- 残った料金に対して、企業の福利厚生サービスから提供される補助券やポイントが適用されます。
例:
ベビーシッター利用料金:5,000円
こども家庭庁ベビーシッター券:2,200円(1枚)
企業の福利厚生補助券:1,000円
- 5,000円 – 2,200円(ベビーシッター券)= 2,800円
- 2,800円 – 1,000円(福利厚生補助券)= 1,800円
この場合、最終的な自己負担額は1,800円となります。
注意点:
- 福利厚生補助券の種類や利用条件(利用回数、利用時間、対象となるサービスなど)は、各サービスや企業によって異なります。事前に詳細を確認しましょう。
- 割引の適用順序は、ベビーシッターサービス会社によって異なる場合がありますが、上記のようにこども家庭庁ベビーシッター券が優先されるケースが多いです。
併用が可能なケース②:ご夫婦それぞれの勤務先の割引券
ご夫婦それぞれが異なる会社に勤務しており、それぞれがベビーシッター割引券(こども家庭庁ベビーシッター券や企業の福利厚生補助券など)を受け取っている場合、これらを同一家庭のベビーシッター利用に対して併用できるケースがほとんどです。また、リロクラブとすくすくえいどなどご夫婦で異なる福利厚生サービスに加入している場合、それぞれの福利厚生サービスの割引券を併用することができます。福利厚生サービスを組み合わせて利用することで、さらに自己負担額を減らすことができます。
注意点:
- こども家庭庁ベビーシッター券の場合、1家庭あたりの利用上限枚数(例:月24枚)は、夫婦の券を合算しての計算となります。 夫婦それぞれが24枚使えるわけではありません。
- 同一日に異なる企業の割引券を複数枚使用する際のルールは、ベビーシッターサービス会社によって対応が分かれる場合があるので、事前に確認が必要です。
併用に注意が必要なケース:地方自治体独自の支援制度との併用
地方自治体独自のベビーシッター助成制度は、その目的や財源が異なるため、他の制度との併用について独自のルールを設けていることが多いです。
原則として、以下の点に注意が必要です。
- 重複する目的の助成は不可:
- 例として、東京都の「ベビーシッター利用支援事業(一時預かり利用支援)」を利用した場合、同じ時間帯に病児・病後児保育の補助金など、目的が重複する別の助成金との併用はできないとされていることがほとんどです。
- こども家庭庁ベビーシッター券との併用:
- 一部の自治体では、「こども家庭庁ベビーシッター券を優先的に利用し、残額に対して自治体の助成を適用する」といった条件つきでこども家庭庁ベビーシッター券との併用を認めている場合もありますが、併用を認めていない場合が多いです。
原則併用不可なケース:こども家庭庁ベビーシッター券(通常分)と多胎児用割引券
こども家庭庁ベビーシッター券には、通常の割引券とは別に「多胎児用割引券」が用意されています。これらは、同じ利用日に併用することはできません。 多胎児家庭は、どちらか一方の割引券を選択して利用することになります。
併用にあたってのステップと注意点
制度の併用は、家計の負担を軽減する強力な手段ですが、利用にはいくつかの注意点があります。
ステップ1:利用したい制度の情報を集める
まずは、自分が利用できる可能性のある制度(こども家庭庁ベビーシッター券、企業の福利厚生、お住まいの自治体の制度など)について、最新の情報を収集しましょう。
- 企業の人事・福利厚生担当部署に確認: どのような福利厚生サービスや割引券が利用できるのか、利用条件は何かを詳しく聞きましょう。
- お住まいの地方自治体のウェブサイトを確認: 「ベビーシッター」「子育て支援」「助成金」などのキーワードで検索し、利用できる制度がないか確認しましょう。最新の情報を知るには、電話で直接問い合わせるのが確実です。
- ベビーシッター会社のウェブサイトを確認: 各ベビーシッターサービス会社が、どの割引券や助成制度に対応しているのか、具体的な利用方法などを掲載している場合があります。
ステップ2:併用の可否と適用順序を確認する
利用したい制度が見つかったら、それらを「併用できるのか?」「どのように適用されるのか?」を具体的に確認します。
- ベビーシッター会社に直接問い合わせる: これが最も確実な方法です。利用したい制度名を具体的に伝えて、「Aの割引券とBの助成制度は併用できますか?」「その場合、割引はどのように適用されますか?」と尋ねましょう。
- 地方自治体の担当部署に確認: 自治体の割引券制度は併用に関して複雑であることが多いです。自治体の割引券を活用したいと考えている場合は、他の制度との併用が可能か、直接担当部署に確認してみるとよいでしょう。
ステップ3:利用条件と対象費用を把握する
各制度には、利用条件が細かく定められています。
- 対象となる子どもの年齢: 乳児のみ、就学前まで、小学生までなど。
- 利用目的: 就労のため、リフレッシュのため、冠婚葬祭のため、利用目的の制限なしなど。
- 利用時間帯: 平日昼間のみ、夜間・休日も可など。
- 対象となる費用: 入会金、年会費、キャンセル料、交通費、兄弟割引分、食費などは、多くの割引・助成の対象外となることが多いです。利用料金の「本体価格」のみが対象となることが一般的です。
特に自治体の割引券に関しては、利用目的が明確に定められていることが多くなっています。必ず事前に条件を確認し、自分の利用スタイルに合っているか確認しましょう。
ステップ4:申請方法と利用手続きを理解する
割引や助成の適用方法は様々です。
- 事前割引型: 割引券を提示することで、その場で料金が割引されるタイプ。
- 後日申請・キャッシュバック型: 一度全額を支払い、後日領収書などを添えて申請することで助成金が振り込まれるタイプ。
- ポイント利用型: 福利厚生サービスなどで付与されたポイントを消化するタイプ。
特に、後日申請型の自治体助成を利用する場合、申請期限を過ぎてしまうとキャッシュバックが受けられないこともあります。必要書類(領収書、利用明細、就労証明書など)を事前に確認し、忘れずに準備しておく必要があります。
ステップ5:利用上限を意識する
こども家庭庁ベビーシッター券や企業の福利厚生補助券には、1日あたりの利用枚数や1ヶ月あたりの利用枚数に上限が設定されていることがほとんどです。これらの上限を超えて利用することはできません。家庭での利用回数・金額の目安と補助券の上限は把握しておくとよいでしょう。
