育児・子育て

産後うつの現状と産後ケアの必要性について

赤ちゃんを出産して、幸せな時期なはずなのになぜか憂鬱な気持ちがしてしまう…。そんな経験をしたことがある方は意外と多いのではないでしょうか。現代の日本において、お母さんの産後のサポートを考える上で産後うつの対策は外すことができません。この記事では、産後うつの現状と支援の最新情報について解説します。

産後うつとは

産後うつ(産後うつ病)とは、出産後の女性が経験するうつ病の一種で、ホルモンの変化、育児のストレス、睡眠不足、環境の変化などが重なって起こる精神的な不調です。主に以下のようなさまざまな要因が組み合わさって起こると考えられています。

  • ホルモンバランスの急激な変化(エストロゲン・プロゲステロンの急減)
  • 睡眠不足
  • 育児のプレッシャーや孤独感
  • 過去のうつ病歴
  • パートナーや家族の支援不足
  • 経済的・社会的ストレス

産後うつの主な症状は以下の通りです。

  • 気分の落ち込み、涙が出やすくなる
  • 不安やイライラ、パニック症状
  • 楽しいと感じなくなる(興味や関心の喪失)
  • 疲労感やだるさ
  • 自分を責める(「母親失格」など)
  • 赤ちゃんに対する愛情が感じられない
  • 食欲・睡眠の変化(不眠や過眠)
  • 死にたいと思うことがある(希死念慮)

産後は誰でも環境の変化やホルモンの変化が起こり、様々な症状が出る可能性があります。産後うつは「弱い人」がなる病気では決してなく、誰にでもなる可能性があるごく一般的な疾患であることを理解する必要があります(産後うつはおよそ8~10%の母親に起こると言われています)。また、産後うつの症状を放置することで長期的なうつへの移行や育児への悪影響が起こる可能性もあるため、通常と違う精神状態を感じた場合には早急に周りに相談することが大切です。

エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)とは

エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS:Edinburgh Postnatal Depression Scale)とは、産後うつ病のリスクを早期発見するために使われる自己記入式の質問票です。1987年にイギリスのエジンバラで開発され、世界中で広く使用されています。

■対象者:主に産後数日~数か月の母親

■目的:産後うつの兆候を早期に発見し、必要な支援につなげること

■質問内容:以下10項目(過去7日間でどうだったかを問う)

  1. 過去7日間に、笑うことができたし、物事のおかしい面もわかった。
  2. 物事を楽しみにして待った。
  3. 物事がうまくいかない時、自分を不必要に責めた。
  4. はっきりした理由もないのに不安になったり、心配したりした。
  5. はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた。
  6. することがたくさんあって大変だった。
  7. 不幸せな気分なので、眠りにくかった。
  8. 悲しくなったり、惨めになったりした。
  9. 不幸せな気分だったので、泣いていた。
  10. 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた。

■評価:10個の質問に対して「はい、たいていそうだった」~「全くできなかった」までの4つの選択肢から回答を選び、合計の点数を集計します。集計結果の点数に応じて、以下の判断となります。

合計点数判断の目安
0~8点特に問題なし
9~12点軽度のうつの可能性(要経過観察)
13点以上産後うつの疑い(専門機関の受診を検討)

産後うつの現状

産後うつ病のお母さんたちは、症状に苦しんでいても、なかなかそれが病気のせいだとは思わない・気付かないものです。妊産婦の死亡原因として発表されているデータを確認すると、毎年出血などの産科的な問題よりも自殺の方が多いという事実があります。妊産婦の自殺には産後うつ病、あるいは妊娠期からのうつ病が影響しているケースが非常に多いと推測されており、産後うつの予防はお母さんと子どもの健康を守る上で欠かせないものです。

「みんな大変な思いをして育児をしているのだから、私もがんばらなければいけない」「赤ちゃんがかわいく思えないなんて言ったら、ひどい母親だと思われてしまう」といった気持ちから、周りになかなか相談することができず、症状が悪化してしまうケースも多くあります。ぜひ、妊婦さんだけでなくすべての人が産後うつの現状と産後ケアの重要性を理解し、適切な治療につなげられるようにしていきましょう。

産後ケアとは

産後ケアとは、2014年にモデル事業として開始された「誰もが安心・安全な子育てできる環境を整えるため」の事業です。そのための条例が定められており、各市町村は努力義務ではありますが対策を行う必要があります。

産後ケアについて:子ども家庭庁

対象は主に産後1年以内の女性で、自治体によりますが受けられるサービスは以下の中から選ぶことができます。

宿泊型(ショートステイ)短期入所型とも言われます。病院や助産院等の空きベッドの活用等により、宿泊による休養の機会を提供します。(費用:1泊あたり6,000円程度)
通所型(デイサービス)個別・集団で支援を行える施設において、日中、来所した利用者に対して実施します。(費用:1回あたり2,000円程度)
居宅訪問型(アウトリーチ)実施担当者が利用者の自宅に赴き実施します。(費用:1回あたり1,500円程度)

産後ケアは以下のような経験・資格を持った人たちが担当しており、特に宿泊型のサービスを受ける場合は保健師・助産師・看護師のうち1人以上の配置が条件となっています。

  1. 母子保健指導員、児童委員、民生委員、NPO法人
  2. 事業の趣旨・内容を理解した経験者やシニア世代
  3. 保健師、助産師、看護師
  4. 育児に関しての知識を有するもの(保育士、管理栄養士等)
  5. 心理に関しての知識を有する者

サービスを受けられる対象者は自治体によって少しずつ異なりますが、基本的に産後1年以内で心身の不調や育児に関する不安がある方は利用することができます。

申込方法はまず地域の子育て支援課等に電話で連絡し、電話もしくは対面で面談を行い利用申請許可を受けます。その後、実際に利用する日程を予約する形になります。たとえば「今日辛いから利用したい!」という気持ちがあったとしても、当日や明日といった急な日程で利用できる自治体は少なく、2週間後~1ヵ月後くらいの日程が予約可能となっていることが多いです。そのため、辛くなったら連絡しよう、ではなく産後はとりあえず面談・登録しておこう!という気持ちで動いておくことが大切です。

また、最近では電話での面談ではなくWEBで必要事項の入力が完結する自治体も増えてきており、少しずつ利用するハードルは低くなってきています。興味がある方は、ぜひすぐにお住まいの自治体の制度や利用方法を確認してみてくださいね。

産後ケアの現状

産後ケアの必要性は近年強く言われるようになり、自治体ごとに独自のサービスを追加するなど、だんだんと産後ケア事業は充実してきています。例えば、東京都品川区では2025年度から妊婦さん一人一人に対して専属の助産師(パーソナル助産師)が産前産後のサポートをする「オンラインMy助産師事業」を独自に始めました。利用料は区が全額負担するため無料で、チャットでの相談や、オンラインでの面談をすることができます。妊婦さんのうちからそのようなサポートを利用することで、産後ケアの情報も入りやすくなり利用につながりやすいというメリットがあります。

ただ、上記のように各自治体で努力はしていますが、産後ケア事業はいまだサービスが必要な人に届ききっていないという現状があります。「サービスについての案内を見たことがない」「自分も産後ケアを使えるとは思っていなかった」といった声がまだ多く聞かれています。すでに疲れ切っているお母さんにどうやってサービスを知ってもらい、使ってもらうかというのがこれからの課題であると言えるでしょう。

産後ケアとして利用するベビーシッター

産後ケアのサービスは自治体を通じて低価格で利用できますが、事前予約制でなかなか予約が取れないという声も多く聞かれます。そんな時には民間のベビーシッターサービスに登録し、不調を感じる前から定期的に、もしくは少しでも不調を感じた場合にすぐに使えるようにしておくことをおすすめします。産後ケアのサービスと比べると民間のベビーシッターサービスは費用が高くなることが多いですが、自治体の割引券や子ども家庭庁のクーポンなどを利用できる場合もあり、利用に対するハードルは近年下がってきています。

参考記事:ベビーシッターの割引券は併用できる?賢く活用して家計の負担を減らそう!

民間のベビーシッターサービスも使いたいと思った時に今日明日ですぐ利用できることは少ないので、産後辛くなった時に利用するために、妊娠中から登録を進めておくことをおすすめします。様々なサービスに登録して「使える状態」にしておくことで、選択肢が広がり心の余裕が出てくるというメリットもありますね。

参考:bonvoyage有栖川のベビー&キッズシッターサービス

また、bonvoyage有栖川では夜間専用のベビーシッターサービスも提供しています。「産後の体調回復が思わしくない…」「赤ちゃんの夜泣きがひどく、一晩でいいからぐっすり眠りたい…」「夜勤に行きたいけれどその間赤ちゃんを見てくれる人がいない…」などのお悩みがある場合は、こちらもぜひ利用をおすすめします。保育士もしくは看護師の資格を持った経験豊富なプロが、22:00~8:00の時間帯でしっかりお子様をお預かりします。常に睡眠不足になりがちなお母さんは、一晩ぐっすり眠れるだけでも精神的にはとても楽になるはずですよ。

参考:夜間プレミアムベビーシッターサービス

産後ケアは甘えでも贅沢でもなく、すべての産後の女性が受けるべきケアです。家族以外の誰かに頼ることは最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、不調を感じる前から定期的に助けを求めて一緒に育児を行うことで心身の負担を大きく減らすことができます。今現在産後で悩んでいる方や、これから出産を控えている方はぜひ産後ケアの現状を知り、早めに対策を行いましょう。

ABOUT ME
きら
ITベンチャーや保険代理店での勤務を経て、2024年より株式会社子育て支援本社スタッフの一員として働いています。 小学生と幼稚園児の娘2人を育児中です!