ベビーシッターというと、日本よりも海外で盛んなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。日本でベビーシッター制度が始まったのは1960年代と言われていますが、世界でのベビーシッター制度成立は16世紀から17世紀のイギリスまで遡ります。その頃のイギリスでは裕福な家庭で乳幼児の育児係の若い女性を雇う習慣がありました。この女性たちは当時「ナース」と呼ばれていましたが、その後19世紀頃に教育に特化した「ナニー」という言葉に変化し、使われるようになりました。起源としてはこの「ナニー」がベビーシッターの起源となっています。この記事ではベビーシッター成立の地イギリスをはじめとした様々な国のベビーシッター事情をまとめ、日本との違いを見ていきます。
イギリスの場合
やはりベビーシッター誕生の国ということもあり、誰もが一度は利用したことのあるといっても過言ではないようです。ベビーシッターと一口に言っても様々で、ここまで挙げてきたナニーやベビーシッター以外にも、海外にホームステイして子どもたちの保育や家事をする代わりに家庭から報酬をもらうオペア(オーペア)、学校のお迎え時間から短時間の利用のアフタースクールナニー、自宅などで少人数教育ができる民間資格のチャイルドマインダーなどもあります。料金は地域、シッターの経験、子どもの人数、雇用時間帯によって異なりますが、ロンドンでは時給約10.50ポンド(約2,030円)程度が一般的です。地方では8ポンドから10ポンド(約1,550円から1,940円)程度の料金が多いです。また、イギリスでは法律で子どもを留守番させることが禁じられており、特に6歳未満の子どもを一人で家に置くことはできません。このため、ベビーシッターの需要がより高まっています。とはいえ、ベビーシッターを雇う際の法律は明確ではなく、特に未成年者がベビーシッターをする場合の年齢制限が定められていません。これにより、若いベビーシッターが子どもを預かることが一般的になっていますが、若く常識がない故のトラブルも多発しているようです。
アメリカの場合
アメリカでは、イギリス同様ベビーシッターの利用率が高く、家庭の約60%が月に1回以上ベビーシッターを利用しています。特に、アメリカでは子ども一人の外出を禁止しており、12才以下の子どもの留守番を禁止する条例があるのでベビーシッターの需要が高いです。
ベビーシッターは、学生やアルバイトが多く、時には専門的な資格を持つナニーもいます。利用者は、雇うシッターの信頼性を確保するために、バックグラウンドチェックを行うことが一般的です。学生やアルバイトが多いというと不安を覚えるかもしれませんが、アメリカではスキルよりも人柄やフレンドリーさがシッターを選ぶ上で重視される傾向にあり、バイト中に家族同様の親しい間柄となり、その後何十年もクリスマスカードを送り合う仲になるファミリーとシッターも存在します。
ベビーシッターに学生が多いのは時間があるからというのもありますが、映画やドラマで多く見られるようにシッターが身近な職業であること、高校では労働が体験として認められて学校の成績として評価されることもあることなどが理由として挙げられます。
アメリカのベビーシッターを利用する費用は地域や経験によって異なりますが、平均値では子ども一人につき約20.57ドル(約3,000円)で、2人を預けると約23.25ドル(3,400円)です。
韓国の場合
アジア圏のベビーシッター事情も見ていきましょう。韓国でもベビーシッターは共働き家庭が増えて需要が高まっており、政府も少子化対策で外国人ベビーシッターの導入を推進しています。特に東南アジアからの労働者をベビーシッターとして受け入ることに積極的なようです。
料金は一般的に日本よりも安価で、例えば外国人ベビーシッターに平日週5日日中のお世話をお願いする場合、週5日で160万ウォン(約16万円)程度が相場です。外国人ベビーシッターは安価で依頼できる反面、虐待などのトラブルになるケースもあり、韓国の社会問題となっています。
中東の場合
次は中東のベビーシッター事情です。中東にそもそもベビーシッターの制度があるのか、根付いているのかという印象を抱いている人も多いのではないでしょうか。確かに、中東の国の中には今なお紛争地帯もありますが、裕福な地域では他の先進国と同様に共働き家庭が増えています。カタールではナニー育成の学校もあり、育児は勿論のことカタールの伝統やイスラムの価値観についても学ぶようです。
ドバイのナニー派遣会社「Forbes Nannies」は、お国柄もあってか複数の言語が話せることの重要性や異文化体験が豊富にできることを強く謳っています。カタールの首都ドーハの場合、ベビーシッターの平均的な時給はQAR 20(800円)からQAR 37(1,480円)程度です。ドバイの場合、平均時給はAED50(1,990円)からAED100(3,980円)でドーハの2倍以上になります。
日本との違い
日本では、共働き家庭の増加や育児支援の必要性から、ベビーシッターへのニーズは年々高まっています。ただ、ベビーシッターは諸外国に比べて高価であったり、親が子育てをするのが当たり前という考えが残っていたりすることからベビーシッターの利用はまだ一般的ではなく、利用率は5%未満とされています。
日本のベビーシッターは保育士や認定ベビーシッターなどの有資格者が中心となるため、アメリカのように学生に依頼することはほぼありません。ベビーシッターの年齢層は高くなりますが、日本ではスキルが重視される傾向にあるということでしょう。