出産や育児という人生の大きな転機において、頼れる存在がそばにいてくれたら心強いですよね。そんなとき、注目されているのが「ドゥーラ(Doula)」という存在です。まだ日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、欧米を中心に妊産婦のサポート役として広く活用されています。本記事では、ドゥーラの基本的な役割から活用方法、選ぶ際の注意点までを詳しく解説します。
ドゥーラとは?
ドゥーラとは、妊娠中から出産、産後にかけて、主に精神的・身体的なサポートを提供する専門職のことを指します。医療行為は行わず、助産師や医師といった医療従事者とは異なる立場で、妊婦やその家族を支える存在です。
語源はギリシャ語で「女性を助ける人」という意味を持ち、欧米では「バースドゥーラ(出産時のサポート)」「ポストパートゥムドゥーラ(産後サポート)」など、目的別に細分化されています。
ドゥーラの主な役割
ドゥーラの役割は主に以下の通りです。
1. 妊娠中のサポート
妊娠中の不安や疑問に寄り添い、情報提供や生活のアドバイスを行います。体調や感情の変化に合わせて相談に乗ってくれる存在です。
2. 出産時のサポート
分娩の際には、呼吸法の指導や声かけ、リラックスのためのマッサージなど、心身のサポートを行います。病院出産でも在宅出産でも、妊婦の希望に寄り添ったケアをしてくれます。
3. 産後のサポート
出産後は、育児の手助けや家事支援、メンタルケアを行うことも。育児に対する自信を持てるよう、母親の自己肯定感を高める役割も担います。
ドゥーラを活用するメリット
1. 精神的な安心感
ドゥーラは出産や育児に関する知識が豊富で、的確なアドバイスや寄り添いが可能です。家族とはまた違った第三者の視点からのサポートが、妊産婦にとって大きな心の支えになります。
2. 出産の満足度向上
研究によれば、ドゥーラが出産に立ち会うことで、分娩時間が短くなったり、帝王切開率が下がるなどの報告もあります。これは、妊婦がリラックスしやすくなり、自然な流れでの出産を促せるためだと考えられています。
3. パートナーや家族へのサポート
妊婦本人だけでなく、夫や家族に対しても適切な助言やサポートを行い、家族全体が協力して育児に取り組めるよう導いてくれるのもドゥーラの強みです。
利用時の注意点
ドゥーラの活用には多くのメリットがありますが、いくつか注意すべき点もあります。
1. 医療行為はできない
ドゥーラは医療従事者ではありません。そのため、診察や処方、出産時の医療処置などは一切行うことができません。必要に応じて、医師や助産師と連携をとることが重要です。
2. 資格や経験の差がある
日本ではドゥーラの資格制度がまだ整っておらず、ドゥーラとしての経験や知識に差がある場合があります。信頼できる団体や紹介元から選ぶことが大切です。
3. 相性の問題
ドゥーラとの関係性はとてもパーソナルです。価値観や考え方が合わないと、かえってストレスになることもあり得ます。利用の前に複数人と面談し、自分に合った人を見つけることをおすすめします。
ドゥーラの探し方
日本では、NPO法人や地域団体を中心にドゥーラを紹介・派遣しているケースが増えています。また、「ドゥーラジャパン」などの専門団体に登録されているドゥーラは、一定の研修や認定を受けていることが多いため、安心して依頼できます。
産院などで紹介してもらえるパターンもあるので、ドゥーラを利用したいと思っている場合はぜひ相談してみてください。
ドゥーラの費用はどのくらいかかる?
ドゥーラを検討するうえで、やはり気になるのは「費用」ではないでしょうか。ドゥーラの料金は、提供されるサービスの内容や時間、地域、ドゥーラ本人の経験や資格によって差がありますが、一般的な目安は以下の通りです。
※地域差や団体・個人によって料金は大きく変動します。交通費が別途かかる場合もあるため、契約前に必ず確認しましょう。
サービス内容 | 料金相場(日本の場合) |
妊娠中の訪問サポート(1回2〜3時間) | 約5,000〜10,000円/回 |
出産立ち会いサポート(出産当日+事前事後の面談含む) | 約50,000〜120,000円 |
産後の訪問サポート(1回2〜3時間) | 約4,000〜8,000円/回 |
パッケージプラン(妊娠中〜産後サポート含むトータルプラン) | 約100,000〜200,000円前後 |
ドゥーラとベビーシッターの違いは?
ドゥーラという言葉を初めて聞いた方の中には、「ベビーシッターと何が違うの?」と思う方もいるかもしれません。どちらも育児に関わる支援者ですが、その目的やアプローチ、サポート内容は以下表のように大きく異なります。
ドゥーラ | ベビーシッター | |
主な目的 | 妊娠・出産・産後の母親支援 | 子どものお世話や保育 |
サポート対象 | 妊産婦とその家族 | 主に子ども |
活動時期 | 妊娠中~出産、産後数ヶ月 | 主に産後(乳幼児期) |
提供するサービス | 心身のケア、出産時の立ち会い、家事手伝い、母親のメンタルサポートなど | 子どもの遊び相手、食事・おむつ替え、送迎などの日常的ケア |
医療的知識 | 基本的に出産や母体についての基礎知識あり | 医療行為は不可だが、保育の経験や資格があることも |
精神的サポート | 高い(特に出産・育児への不安軽減) | 比較的少ない(あくまで保育中心) |
それぞれのサービスはこんな人におすすめ
初めての妊娠・出産で不安が強い方、家族の支援が少ない方、精神的なサポートが欲しい方はドゥーラの利用がおすすめです。一方、仕事復帰や一時的なお出かけ・リフレッシュの間に子どもを見てもらいたい方、保育施設に預けるまでの限定的な期間をサポートしてほしい方にはベビーシッターの利用がおすすめです。妊娠・出産・育児という人生の大きな分岐点に対して、自分にはどのようなサポートが必要かまずは考えてみましょう。
